第277回:スズキSX4試乗
これは現代のフィアット・パンダかも?(小沢コージ)
2006.08.26
小沢コージの勢いまかせ!
第277回:スズキSX4試乗これは現代のフィアット・パンダかも?
■日本じゃ中途半端、でも乗ったら……
スズキSX4に乗ってきました。あんまり期待してなかったんですけどね。“スポーツ・クロスオーバー”の略であるSXって名前からしてイメージがわきづらかったし、今後、スズキがWRCで闘うWRカーのベース車ってのも良くわからなかった。なぜこのクルマで? って感じ。
なによりそのスタイルよ。ちょっとクロカン4WDっぽくずんぐりむっくり車高が高い上に、ルーフレール付きグレードもあって、なおかつ全長短め。
結局、日本じゃ泣かず飛ばずだったトヨタ・ヴォルツや昔あった三菱RVRみたいじゃない。なんというか、日本じゃ中途半端なのよ。コンパクトカーとしてはデカいし、RVとしてはワゴンの方がスラっと伸びやかでカッコいい上、ラゲッジも広いと。
ところがどっこい、乗ったら目からウロコが落ちました。こんなにいいクルマだったのか……。確かに日本じゃジャンル的に爆発的ヒットは見込めないかもしれないけど、その存在はまさに適度にオシャレでアクティブな現代的マルチパーパスビークルそのもの。
ヨーロッパ車で言えば、初代フィアット・パンダみたいな存在なのだ。実際、基本フォルムはイタル・デザインがやったって話だしね。ちょっとホメすぎかもしれないけど……。
でも実際、これと同じやつをフィアット・セディチとしてヨーロッパで売ってて、すでに5ヶ月待ちの人気だとか。それもわかるような気がします。
■ヨーロッパ車的なテイスト
まず驚いたのはその走りよね。正直、この手のミニRVってのは、全体的に大味で特に重心の高さからくるハンドリングの“眠さ”があって、走ってもちっとも楽しくないんだけど、これはまさに良く出来たヨーロピアン・コンパクトカーのそれ。
ボディ剛性は十二分に高く、乗り降りのしやすさからもうかがえるように重心が低く、ステアリングがシャープで手応えがちゃんとある。
エンジンは特にパワフルでもないけど、1.5リッター、2リッターともにトルクが十分あって、それからATとのマッチングが良く、加速が思い通りに得られるだけでなく、ブレーキもカッチリ良く効く。なんつーか、基本が出来てるのよ。
それから良かったのが乗り心地。硬めの足まわりと分厚いクッションを持つシートの組み合わせで、過不足なく体を支えてくれる。ちょっとヨーロッパ車的なテイストだ。
居住性も十分あってフロント、リア席ともに背筋を立てて座らせるタイプなんだけど、ヒザも頭まわりも十分に余裕がある。ラゲッジルームも十分に広く、まさに5人ぐらいの家族が日常的に使うには必要かつ十分なクルマなのだ。
デザインも最初はずんぐりむっくりピンと来なかったけど、見れば見るほど丸くキュートかつ細工も効いててインテリジェンスに富んでるのがわかってくる。ま、個人的にはフロントグリルがバカっと開いてるフィアット・セディチの方が大胆で好きだけどね。SX4も悪くない。
ってなわけでハッキリ言ってVWゴルフ並みのユーティリティとしっかり感、デザインレベルの高さを持ってると思うんだけど、それでいて価格は150〜200万円。ハッキリ言って大バーゲンだと思いました。
おそらく軽で有名なスズキ製ってことで、日本じゃトヨタ、ホンダ、日産製コンパクトカーの影に隠れちゃうけど、密かな名車になること間違いなし。俺が駆け出しのアウトドア好きサラリーマンだったら買っちゃうかもしんないよ! って出来です。マジでね。
(文と写真=小沢コージ/2006年8月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。
