スバルXV 2.0i-S EyeSight(4WD/CVT)
高い人気もうなずける 2017.07.17 試乗記 新型へとフルモデルチェンジした「スバルXV」。新開発の2リッターエンジンを搭載した最上級グレード「2.0i-S EyeSight」に試乗し、スバルの人気クロスオーバーの実力と、従来モデルからの進化のほどを確かめた。見えないところが変わった
富士重工の、じゃなくって、スバルの人気SUV、XVが5年ぶりにフルチェンジした。
といっても、カタチは変わっていない。識別点は、リアライトが切れ長になったことだが、素人目に新旧の違いはわからない。こんなに変わらなくて大丈夫なのかと、ひとごとながら心配になるほどである。
ボディーサイズもほとんど変わっていない。立体駐車場に収まる1550mmの全高は同一だ。「ホンダ・ヴェゼル」「マツダCX-3」「トヨタC-HR」といったライバルと比べると、もともとXVはちょっと大柄だから、これ以上、大きくする必要はないということだろう。
しかし、カタチや大きさは変わらなくても、車台は新世代のSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)に刷新された。新たに1.6リッターが加わり、メインの2リッターエンジンも直噴化された。見えないところで変わったのが、今度のXVといえる。
1.6リッターとの2本立てになり、新型の月販目標台数は2200台に増えた。このところ路上でXVが目立つようになったなあと思ったら、「インプレッサ」シリーズとそう変わらない計画台数である。
ちなみに、アメリカのNo.1スバルは「フォレスター」で、月に1万5000台近く売れる。「XVクロストレック」(XVの北米名)はその半分とはいえ、大したものだ。そんなふうに販売ではすっかり米国メインのメーカーになり、社名も横文字に変わったのに、“こころ日本にあらず”のグローバル企業とは思われないのが、スバルのおもしろいところだ。
今回試乗したのは、2.0i-S EyeSight。本体価格267万8400円の一番高いXVである。
乗れば「新しくなった」とわかる
先代からインプレッサとは独立したモデルになったとはいえ、XVは5ドアハッチ「インプレッサスポーツ」の4WDをリフトアップしてSUV化したクルマには違いない。
新プラットフォームで生まれ変わった新型インプレッサは、半年ほど前に4WDの「2.0i-S EyeSight」に試乗して好印象を受けた。クルマの“基礎”から底上げしたかのような“よくなりかた”には、いまの「ゴルフVII」をかなり研究したあとをうかがわせる。
今回乗ったXVもあのときのデジャビュかと思わせる出来である。ボディーやサスペンションの剛性感が上がった。特に足まわりは、動きがかろやかになり、乗り心地もより上質になった。なんというか、乗り味から雑味がなくなっているのだ。3割パワーアップ! みたいなことと違って、派手さはないが、走りだしたとたん、あっ、新しくなったなとわかる違いである。
直噴化された2リッター水平対向4気筒も、そうした洗練度の深化に呼応している。高回転へ上り詰めるときの“小さいものが回っている感じ”が気持ちいい。最高出力も最大トルクも、それぞれの発生回転数もインプレッサ用と同一。車重は同じ2.0i-S EyeSightのインプレッサスポーツより50kg増えているが、特に重くなった印象はない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
なめらかに回るエンジンに対し……
スバルは国産CVT車のパイオニアで、1984年にオランダのヴァンドールネからスチールベルトを調達して電磁クラッチ付きのCVTを自製し、リッターカーの「ジャスティ」に採用している。決して具合のいい自動変速機とはいえなかったが、進取の気性に富むスバルらしかった。
新型XVの変速機もおなじみのリニアトロニック。7段マニュアルモード付きのCVTで、シフトパドルも備わる。だが、エンジンがこれだけなめらかで、しかも“回りたがり”になると、回転だけ上がって、車速がついてこないCVTの徒労感が今回ちょっと気になった。
センターパネルにあったSIドライブのダイヤルはなくなり、モードも“スポーツ”と“インテリジェント”の2つに減り、ハンドルスポークの小さなスイッチで操作するようになった。
デフォルトは、省燃費指向のインテリジェントモードである。60km/hで流しているとき、Sボタンを押すと、1000rpmほどエンジン回転が上がる。だが、アバルトのスポーツモードのようにドライブ特性が激変するわけでもなく、メーターが赤くなるわけでもない。インテリジェントモードでも、アクセルを深く踏み込めば、スポーツモード同様、レッドゾーン手前の6300rpmに張り付いて回る。山道ではスポーツを使ったが、戻し忘れて、高速道路もそのままで走った。これがなければ、11.1km/リッターのトータル燃費はもうちょっとよくなっていたかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
エンジンビートにスバルを感じる
XVには「アイサイト」のver.3が全車に標準装備される。さらに試乗車にはオプションの「アドバンスドセイフティパッケージ」が付いていた。このなかには「後退時支援」という機能がある。一度高速SAの駐車場からバックで出ようとすると、ピピッと電子音が鳴って、左からクルマが来ていることを教えてくれた。運転席からはまったく見えないクルマだった。非常に有用な運転支援装置である。
エンジンはなめらかに回るが、例えば高速道路で軽く踏み込んでジワジワと加速するようなとき、フラットフォー特有のザワザワしたビートをかすかに感じて、あっ、スバルだ! と思う。
同じ2.0i-S EyeSightのインプレッサスポーツ4WDは、259万2000円。それプラス8万6400円で同じ装備のSUVが手に入るのだから、XVの高い人気も納得がいく。日本車離れした中間色のすてきなボディーカラーが多いのもXVの魅力である。
いま乗っている人が、無理して新型に乗り換える必要はないが、いまからXVを求めるなら、絶対新型だ。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
スバルXV 2.0i-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4465×1800×1550mm
ホイールベース:2670mm
車重:1440kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:154ps(113kW)/6000rpm
最大トルク:196Nm(20.0kgm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98V/(後)225/55R18 98V(ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:267万8400円/テスト車=278万6400円
オプション装備:ルーフレール(5万4000円)/アドバンスドセイフティパッケージ(5万4000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2692km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:532.3km
使用燃料:48.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:11.1km/リッター(満タン法)/11.3km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.12.6 マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。












































